ものづくりのこと

加賀棒茶水出し用ポット

2021年8月3日公開

水出しの「献上加賀棒茶」のおいしさ、本当の焙じ茶のおいしさを
届けるために、「加賀棒茶水出し用ポット」はつくられました。

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水出しで引き出される
「献上加賀棒茶」のおいしさ。

丸八製茶場がはじめて水出しの「献上加賀棒茶」をお客様に提供したのは、ひがし茶屋街にある「茶房 一笑(いっしょう)」でした。1994年(平成6年)にオープンした「茶房 一笑」は、町家を改装した店舗です。その後、ひがし茶屋街には同じように町家のよさを利用し、改装した店舗が増えましたが、当時は新しい試みでした。

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ひがし茶屋街「茶房 一笑」。2018年(平成30年)ころ。

石川県で日本茶の価値を高めるため、「茶房 一笑」では上質な接客・メニューの提供と、当時としては大胆な価格設定で、日本茶業界を切り開いていきます。

お客様へのおもてなしにもこだわりました。一般的には、お客様が席に着かれたときには、お水をお出しすることが多いのですが、丸八製茶場ではお水の代わりに水出しの「献上加賀棒茶」とおしぼりを一緒に出すことにしました。

そして、この小さなグラスで提供される「献上加賀棒茶」には、丸八製茶場の五代目社長 丸谷誠一郎も驚いたおいしさがつまっていました。

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リニューアルした「一笑」で、今も提供されている水出しの「献上加賀棒茶」。

「茶房 一笑」がオープンした1990年代は、ペットボトル入りの冷たいお茶が普及し、冷茶を日常的に飲む人が増えた時代でした。丸八製茶場では、同じ冷たいお茶でも、よりおいしいいれ方の研究を行っていました。

丸八製茶場で扱っているさまざまなお茶を水出しした中で、特に水出しの「献上加賀棒茶」のおいしさに驚いたと、五代目社長 丸谷誠一郎は語っています。「こんなにおいしいものを、世の中に出すことができたらすごい」。

冷水でじっくり浸出した「献上加賀棒茶」は、もともと持っている旨味・甘味が引き出され、さらにクリアな芳ばしさとすっきりとした味わいが際立ちます。そのおいしさは、煎茶や玉露の水出しよりも、鮮烈なものでした。

水出しの「献上加賀棒茶」を、たくさんの人に飲んでいただきたい。しかし、水出しにしたお茶を、私たちが提供したい品質を保ちながら全国へ流通させるためには、浸出する方法や品質の維持の問題がありました。そこで2006年(平成18年)に開発されたのが、家庭で水出しのお茶をつくることができる「加賀棒茶水出し用ポット」です。

本当の焙じ茶のおいしさを
伝えるデザイン。

「加賀棒茶水出し用ポット」を開発した五代目社長 丸谷誠一郎は、ただお茶をいれるだけの道具ではなく、水出しの「献上加賀棒茶」の端正なおいしさにふさわしいデザインを求めていました。日本茶の世界では、お茶そのものはもちろん、お茶を飲む器や使われる道具へのこだわり自体が、豊かな文化をつくり出しています。

「加賀棒茶水出し用ポット」のデザインは、プロダクトデザイナーの川上元美(かわかみもとみ)さんに依頼しました。国内外の賞を受賞され、金沢美術工芸大学でも教鞭を取られている川上さんは、生活者としての美意識を大切にする心で、「加賀棒茶水出し用ポット」のデザインにも向き合ってくださいました。

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シンプルなデザインは、使う人の所作までも美しく見えるよう、緻密に計算されています。

本体には、凛とした美しさのあるガラス素材を使いました。テーブルに出して「献上加賀棒茶」の琥珀色を楽しんでいただくことができるガラスは、同時に臭いがつきにくく、「献上加賀棒茶」の繊細な香りを邪魔しないためのものです。

600mlのサイズは、いれたてのおいしさのまま飲みきれる3杯分です。ごくごく飲む冷たいお茶もよいのですが、冷たいお茶を一口一口、じっくり味わうことをイメージしてつくりました。

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本体は、耐久性を保ちながら、ガラスの繊細さが感じられる薄さです。 側面の直線から立ち上がる注ぎ口のかたちにも、どこか美しさが感じられます。

男性から女性まで、すべての人が片手で注げるデザインにもこだわっています。蓋を押さえながら注ぐ必要がないよう、蓋にはシリコンのゴムを取り付けました。取手がなくても手でしっかりと持てるよう、一般的な水出しポットよりもスリムな形状になったことで、デザインとしても余計な装飾のない、美しいものに仕上がっています。

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蓋は割れにくい樹脂製です。それぞれ長くお使いいただけるよう、本体と蓋は別売りもしています。

2006年(平成18年)に発売された「加賀棒茶水出し用ポット」は、同年グッドデザイン賞を受賞しました。それから15年あまり、「加賀棒茶水出し用ポット」は丸八製茶場の定番商品として、販売され続けています。

忙しい日常の中で、さりげなく触れたり、口にしたりするものに、しっかりとしたこだわりが込められていることは、実はとても豊かなことなのではないかと思います。
水出しの「献上加賀棒茶」はもちろん、さまざまなお茶にお使いいただける「加賀棒茶水出し用ポット」。焙じ茶を飲む空間を、凛と彩るくらしの道具として、ぜひお使いください。

◉水出し献上加賀棒茶のレシピはこちら
https://www.kagaboucha.co.jp/cat1/single.php?id=16

献上加賀棒茶

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加賀棒茶水出し用ポット

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