《お茶と言葉》

昔ながらのお茶の、言葉。

2023年10月12日公開

お茶と同じ嗜好品であるワインは、「一期一会のような味」
「猫のように気まぐれな味」のようにユニークな表現で形容されます。
「お茶と言葉」では、焙じ茶をはじめとするお茶について表現する言葉を、自由に考えてみます。

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焙じ茶をはじめとする日本茶は「旨味」「渋味」などといった言葉で表現されることが多いのですが、それに比べると、ワインの味の表現は自由です。

「お茶と言葉」は、丸八製茶場の社員がお茶を飲んで感じたことを、ワインのように自由に表現してみる試みです。一般的なお茶についてよく使われる表現とは違う、ユニークな言葉が、皆様のお茶選びの際の参考になれば幸いです。

日本と韓国の、伝統のお茶の言葉。

前回までは、いろいろな焙じ茶について集まった言葉をご紹介しました。今回は、韓国と石川県の、昔ながらのお茶についてご紹介します。

丸八製茶場では、勉強のために社員がさまざまなお茶を持ち寄ります。その中で、韓国で生まれ、そのおいしさや美容効果から近年日本でも人気が高いコーン茶の言葉について、考えてみました。

コーン茶は、大きくとうもろこしの「実」を使ったものと「ひげ」を使ったものがあり、一般的に「ひげ」を使用したものはとうもろこしの味が強く出ると言われています。今回のコーン茶は、「とうもろこし ひげ茶」という、韓国産の「ひげ」を使ったものでした。

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爽やかで健康的なイメージの「暑い日に風を感じて歩く感じ」「暑い夏の日。犬と一緒に歩く田んぼ脇」。どちらも、風を感じたり、田んぼ脇を歩いたり、暑い夏の涼し気な一瞬を切り取っているように見えます。この時に飲んだお茶は温かいものでしたが、とうもろこしの風味が、心地よい夏の風景を思い出させるのでしょうか。味覚が季節を連想させる、よい例かもしれません。

「祭りの後の屋台と焼きトウモロコシ」「明け方に食べるホットケーキ」は、どちらも食べ物が出てくる表現です。「祭りの後の屋台」は、華やかなお祭りが終わり、片付けがはじまる時間の、名残惜しさが感じられます。明け方のホットケーキはどんな味がするのでしょうか。まだ少し眠気がある中、ふんわりと部屋いっぱいに漂うホットケーキの香りの中でゆっくりと目が覚めていく心地よさもあるのかもしれません。

はじめて「コーン茶」を飲んだ社員もいる中、どこか懐かしさを感じる表現が多かったのが印象的でした。

次は、丸八製茶場の茎の焙じ茶「ほうじたて」の言葉です。「ほうじたて」は、「献上加賀棒茶」ができる前から丸八製茶場でつくられていた茎の焙じ茶です。

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「思い出をなつかしむ様子」「暖炉にあたって物思いにふけっている香り」。どちらも、少し切ない印象なのは、昔ながらの焙じ茶へのノスタルジーでしょうか。「コーン茶」と違い、「ほうじたて」で集まった言葉からは、すべて温かさが感じられます。

続くのは「親戚のお兄ちゃん」「親戚の家」など、家族でもない友人でもない、「親戚」という絶妙な距離感の関係性を使ったもの。普段はあまり会うことができない親族の家を訪ねる、お盆や年末年始の挨拶のシーンが思い浮かびます。皆で囲むテーブルの上には、焙じ茶があったのかもしれません。「かっこいいお兄ちゃん」は、焙じ茶の穏やかな香りのように、優しく包んでくれる存在だったのかもしれませんね。

「チョコレートのような濃厚さ」「焼き芋っぽい甘さ」は、他の食べ物を使って「ほうじたて」の深い味わいを表現したものです。いずれも甘いもので例えられており、強めの焙煎から生じる焙じ茶の甘味を感じ取った表現となっています。

土曜日の授業は、今、どれくらい行われているのでしょうか。授業が午前で終わった日の午後は、次の日が休日だという気持ちも手伝って、ちょっと特別な時間でした。同じ焼き芋を使った表現の中でも、「土曜日。学校が半休の日のおやつの焼き芋」は、そんな幸せな時間が想い浮かぶようです。

「こたつにもぐって赤いところをずっと見つめている感じ」は、「ほうじたて」のほっとする味わいから、こたつの熱を連想したのでしょうか。こたつにもぐって遊んでいた子どもの頃、赤く照らされた狭い空間はどこか特別で、守られた家の中の小さな異世界に想像力を誘われたものです。

これまで丸八製茶場の焙じ茶の言葉を集めてきた中でも、「ほうじたて」は比較的家の中で過ごす時間をイメージさせる言葉が多いことが印象的でした。「献上加賀棒茶」が少し背筋の伸びるお茶だとしたら、「ほうじたて」は、普段の暮らしに馴染みやすいお茶かもしれません。

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今回ご紹介した「ほうじたて」は、一番摘みだけでなく二番摘みのチャの茎もブレンドされた焙じ茶です。一番摘みの茎を浅く焙じあげた「献上加賀棒茶」に比べ、深い焙煎の香りや穏やかな味わいが楽しめます。「献上加賀棒茶」は上品で爽やかなイメージ、「ほうじたて」は安心感に包まれ、ほっと気持ちが和らぐ印象と言えるでしょうか。もともと加賀棒茶は、石川県で緑茶が生産されていた頃に、余っていた部位を再利用したことで生まれました。一番摘みと二番摘みがブレンドされた原料から生まれる味わいは、郷土の歴史を感じさせる昔ながらの懐かしさを持ち合わせたお茶と言えるかもしれません。

ほうじたて

ほうじたて

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