富山県にはたくさんの名水の採水地があり、私たちも毎日をおいしい水と共に過ごしています。その中で今回ご紹介したいのは「昭和の名水百選」に選ばれた、ある霊場の湧水です。

富山県の東では「谷」を「たん」や「だん」と呼び、「布施谷」は「ふせんたん」、「釜谷」は「かまたん」と呼ぶのですが、その名水の地の名前は、「穴の谷」。何と呼ぶかわかるでしょうか？
答えは「あなんたん」。他県のかたは一瞬戸惑われるのですが、富山県民にとっては古くから親しまれている名前です。江戸時代、美濃国の白心（はくしん）法師がこの地で修行してから霊場として知られるようになった「穴の谷」。その水源は北アルプス 立山連峰にある剱岳（つるぎだけ）で、長い年月を経て濾過された水は私たちの元へ届くころには甘さを感じるほどのまろやかな軟水になります。

焙じ茶の味は水によって変わり、丸八製茶場の店舗でも同じ金沢市にある金沢百番街店と一笑（いっしょう）で味が違うといわれるほど。「穴の谷霊水」は、以前「syn」で行われた、さまざまな名水でいれる焙じ茶の飲み比べの会の中でご紹介した水でもあります。
「穴の谷霊水」はおいしいだけでなく万病に効くと信じられており、県内だけでなく日本各地から多くの人が訪れます。水くみ場へ続く道には感謝の気持ちから寄進された地蔵が立ち並び、108段続く階段を降りたところにある採水地は青々とした木々に囲まれ、霊気が満ちているように感じられました。

決して便利とはいえない場所ですが、そんな場所に辿り着くまでの時間も旅の楽しみ。この夏は、富山の名水に出会いに行ってみませんか？

富山 syn スタッフ

穴の谷霊水
076-472-4711（7:00-17:00／一般社団法人 穴の谷弘真会）
富山県中新川郡上市町黒川84
滑川ICから車で約10分、富山地方鉄道本線上市駅からタクシーで15分
https://anantan.jp