《季節のほうじ茶》

8月「たかちほ」

2023年7月28日公開

丸八製茶場が毎月数量限定で発売している「季節のほうじ茶」は、
さまざまな品種の茶葉を、その個性が生きる焙煎で仕上げた焙じ茶です。

column/2023/0727/169043717802_1400_1400_100_auto.jpg

爽やかな渋味が呼ぶ
清らかなせせらぎのような涼しさ。

8月の「季節のほうじ茶」は、「たかちほ」です。「たかちほ」は、「釜炒り茶」のためにつくられた品種です。今回は、釜炒りした「たかちほ」をさらに焙煎し、焙じ茶に仕上げました。

多くの煎茶は、茶葉を摘んだ後に蒸して熱を加えて酸化を止めるのですが、蒸すのではなく、釜で炒って熱を加えたものを「釜炒り茶」といいます。その「釜炒り茶」の生産量日本一を誇るのが、宮崎県西臼杵(にしうすき)郡。その中の、茶葉の名前の由来となった高千穂町で、「たかちほ」は育ちました。

釜炒り茶の特徴は、どこか懐かしい「釜香(かまか)」と呼ばれる香りです。特に今回の「たかちほ」は、カラッとした丸みのある芳ばしさに燻したようなニュアンスが感じられる仕上がりとなりました。

column/2023/0727/169046130010_1400_1400_100_auto.jpg

飲んだ瞬間は、すっきりした爽やかな味わい。その後に、釜炒り茶独特の香りが広がります。

お勧めは水出しです。芳ばしく爽やかな中に少しクセのある香りが漂い、口の中に残る渋味が涼しさを感じさせてくれます。繊細なバランスにこだわった焙煎を、ぜひ楽しんでみてください。

「たかちほ」を飲みながら読みたい、
神様の姉弟げんかのお話。

「季節のほうじ茶」をご紹介するこの記事では、その味わいから連想される本をご紹介しています。今月の本は、荻原規子(おぎわらのりこ)さん・大畑いくのさんの『天の岩屋』です。

太陽の神 アマテラスが岩屋に隠れてしまった物語。『古事記』にあるこの神話に、何らかのかたちで触れたことのある方は多いでしょう。この絵本では、その登場人物である神様の、人間らしい部分が描かれています。

アマテラスの弟 スサノオは、父に海原を治めるように命じられたのに、母の国へ行きたいと泣いてばかりいます。そして母の国へ行くことを許されると、それを報告するために、なぜかものすごい勢いで姉アマテラスのもとへ向かうのですが、その勢いは、アマテラスが弟が自分と戦いにきたのではないかと疑うほどです。そしてその誤解が解けた後も、スサノオはアマテラスが治める天空の国でさまざまな事件を起こします。その様子は、まさにイタズラ好きの弟を持て余すしっかり者の姉。現代に通じる、親しみの持てる人間模様です。

column/2023/0727/169043718806_1400_1400_100_auto.jpg

三浦佑之 監修、荻原規子 文、 大畑いくの 絵『天の岩屋~アマテラスとスサノオ~ 』小学館。力強い筆遣いと厚みを感じる色彩で、神様の世界の不思議さと、美しい自然が表現されています。

「たかちほ」がつくられた宮崎県西臼杵郡高千穂町には、『天の岩屋』の舞台とされる場所が残されています。鬱蒼と繁る木々が光を遮り、透明な水が涼し気に流れる岩場の奥にある洞窟のような空間は、確かにアマテラスオオミカミが隠れたとされる岩屋をイメージさせます。

同じような岩窟は全国にいくつかありますが、スサノオがアマテラスのもとへと向かう勢いで山や川を動かしてしまう神話の世界のスケールを考えると、どれも信じることができるような気がして不思議です。

現在よりも自然との距離が近かった時代、人々は自然の美しさにも、その脅威にも、人知を超えた「神様の力」を見ていたのでしょう。「たかちほ」のどこか懐かしい香りは、そんな一つひとつの出来事が大らかで、世界が不思議に満ちていた昔を想像させます。人々の中に神様が生きていた時代に思いを馳せながら、神話との縁が深い名の焙じ茶を、味わってみてください。

*「たかちほ」は2023年8月1日より発売です
*2023年8月の期間・数量限定商品です。
 限定数に達した場合は販売終了とさせていただきます