焙じ茶を飲む人。堀江美佳さん(アーティスト)
2021年12月3日公開
日頃から「献上加賀棒茶」を愛飲いただいている方に、お話を聞きました。
石川県で作品の制作をされているアーティストの堀江美佳(ほりえみか)さんは、京都府出身。
移住のきっかけも、「献上加賀棒茶」との出会いも、展示で石川県加賀市を訪れたことからでした。
加賀の自然と共にくらす
豊かな時間。
アーティストの堀江美佳さんがくらしているのは、石川県の南加賀地方にある、山間の小さな集落です。住居兼アトリエとなっている古民家周辺の山から、雁皮(がんぴ)という植物を採取し、家のすぐ側を流れる川の水を使って、作品に使う和紙を漉いています。
もともとは京都府ご出身の堀江さん。お話を聞くと、いつもくらしの中にお茶があったことがわかりました。「京都にいた頃は、飲み物といえば番茶。やかんで煮出す、濃い茶色のお茶でした」。その後、イギリスに留学。ホストファミリーの家で出された濃いミルクティーは「ティーバッグをマグカップに入れてつくるものだったのですが、これが甘くて、おいしくて。イギリスの思い出の味ですね」。
その後、展示で世界を周るようになってからは、訪れた国でその地域のお茶を買うことが習慣に。「帰国する頃には、お茶でスーツケースが閉まらなくなるほどです」。
これまでさまざまなお茶を楽しんできた堀江さん。その堀江さんが「献上加賀棒茶」をよく飲まれていると聞き、お話をうかがうことにしました。
展示がきっかけで訪れた加賀で
「献上加賀棒茶」に出会う。
「献上加賀棒茶」、「焙茶noma(ノマ)」など、現在ではさまざまな丸八製茶場の焙じ茶を楽しまれている堀江さん。丸八製茶場の焙じ茶との出会いは、石川県加賀市山代温泉での展示がきっかけでした。現地での準備の帰りに持ち帰ったお土産の中に、「献上加賀棒茶」があったのです。
「初めて飲んだ時、お花のような香り、と思ったのを覚えています。京都の番茶は深炒りだったので、すごくフルーティで口あたりが爽やかに感じて。こんな焙じ茶があったのか、と」。
石川県に移住してからは、車で10分の距離になった丸八製茶場の直営店 実生(みしょう)で、さまざまなお茶を購入いただいています。「朝昼夜と、いろいろなお茶を飲んでいます。昼間は作業の合間にいただくのですが、この作業が終わったら何を飲もうかな、と考えるのが楽しみです。『献上加賀棒茶』は何にでも合うので、特によく飲んでいますね」。
加賀市の自然から生まれる作品。
独自の「青」の表現。
デジタルカメラで撮影した後、様々なサイズの白黒フィルムを作り、自身で漉いた和紙にプリントしてつくられる、堀江さんの写真。現代ではあまり使われていない「サイアノタイプ」と呼ばれる技法を使っており、青い色が特徴です。
「青い色にはこだわりがあります。自然の根本の色であり、見る人が自分の中にある時間軸で写真を感じることができる色。過去・現在・未来を感じさせない、普遍的な色だと思っています」。
和紙にプリントする、という方法は、堀江さんがイギリスから帰国した後に、京都で見出したものでした。「和紙を使うことで出るにじみや深みが、絵画のように感じられることに魅力を感じたんです」。
そして、この和紙の原料である雁皮が、堀江さんがこの家に移り住む決め手となりました。
山代温泉での展示の後、石川県で家を探すことにした堀江さん。「候補としてこの家を見にきたとき、偶然外に出てきた隣の家の方に作品のことを話していたら『この周辺の山から雁皮が採れる』という話になって、ここだ!と」。
後に、石川県の南加賀地方で手に入る雁皮は日本で手に入る雁皮の中でも最高峰のものとわかります。そして雁皮だけでなく、写真を現像する、和紙を漉く、などの作業に欠かせない、天然水がすぐ側で手に入る環境は、堀江さんの作品づくりにぴったりだったのです。
お茶も、和紙も、水で変わる。
「きれいな水」の力。
和紙づくりに欠かせないきれいな水は、お茶をいれるのにも欠かせないものです。
「お茶をいれるとき、一番こだわっているのは、お水かもしれません。近くに動橋(いぶりはし)川の源流があるのですが、その場所の水でいれたお茶は、澄んだやわらかい味がするんです」。
「おいしいもので、1日が変わるので」と、普段お茶をいれるときにも、そのお茶本来の味でいれられるよう、茶葉の量や浸出させる時間に特に気をつけているという堀江さん。来客時はよりおいしくいれるために、あえてティーバッグで茶葉の量を正確にするほどです。
「日光が必要なので、本当に自然のリズムでくらしています」という堀江さん。堀江さんの家で1日を過ごし、お話をうかがい、この土地のくらしを楽しみながら作品づくりに向き合われている、その風景の中に「献上加賀棒茶」があることを、うれしく思いました。