葉の焙じ茶、茎の焙じ茶。
2021年9月3日公開
日本のお茶の中でも意外と知られていない焙じ茶について、
つくり方から楽しみ方までお伝えしていきます。
スタンダードな、葉のお茶。
少し珍しい、茎のお茶。
寒い冬を越えて育ったチャの樹は、春に摘み採りを行います。手摘みなどの上級なお茶は、「一芯二葉」と呼ばれる先端の芯とその下の二枚の葉を収穫してつくられます。お茶の種類によっては、さらにその下の部分も摘み採るのですが、このとき、チャの樹の茎の部分も一緒に収穫されます。
収穫されたチャは、その後、蒸し、揉み、乾燥、火入れの工程を経てお茶になっていくのですが、この揉みの工程の際、葉の部分と茎の部分が分かれます。
分けられた葉の部分は、「煎茶」や「玉露」になります。一般的によく飲まれている緑茶です。
一方、茎の部分も、「茎茶」や「棒茶」と呼ばれる緑茶になります。これは、地域によって「雁ケ音(かりがね)」や「白折(しらおれ)」とも呼ばれます。
ちなみに丸八製茶場のある石川県加賀市では、「棒茶」というと茎を使った焙じ茶を指すことが多いのですが、全国的には茎を使った緑茶を指すことが多いようです。
では、葉のお茶と茎のお茶の味わいには、どのような違いがあるのでしょうか。お茶の味わいは、主にカテキン(渋味・苦味)・アミノ酸(旨味)・カフェイン(苦味)の成分によって決まります。
「煎茶」をはじめとする葉のお茶は、カテキンやアミノ酸、カフェインが含まれていて、苦味・渋味・旨味が調和した味がしっかりと感じられます。
「茎茶」をはじめとする茎のお茶は、葉のお茶と比べると、カテキンやカフェインが少ない反面、アミノ酸が多く含まれています。そのため、苦味・渋味が弱くさっぱりとしていますが、旨味が感じられます。茎のお茶には、葉と茎の選別の際に、形状が似ている先端の芯の部分が混ざることが多いのですが、これも程よい旨味となり、淡白な味わいの中に甘みのある、独特のおいしさがつくり出されているといわれています。
葉の焙じ茶と、茎の焙じ茶。
チャの樹から、葉のお茶と茎のお茶が作られることが分かりましたが、これを焙煎して焙じ茶にすることで、どのような味わいの違いが出てくるのでしょうか。
葉の焙じ茶は、品種によって味わいの特徴が出やすく、焙じることで程よい渋味とコクが生まれます。しっかりとした味わいは、アレンジティーにも向いており、特に「焙じ茶ラテ」のようにミルクを使ったものがおすすめです。丸八製茶場の商品では、「加賀ほうじ茶」・「深炒り焙茶BOTTO!」などが葉の焙じ茶です。
茎は焙じることで、芳ばしさや旨味、甘味が生まれます。すっきりとした芳ばしさと甘味が際立つ、冷水を使った「水出し」は、夏の季節にお勧めです。丸八製茶場の商品では、「献上加賀棒茶」、「ほうじたて」が茎の焙じ茶です。
丸八製茶場では、2011年に石川県工業試験場に依頼し、葉と茎の焙じ茶に含まれる香り成分を比較しました。この時のデータから、茶葉を焙煎することで、「芳ばしさ」の成分であるピラジン類が増え、さらにラベンダーなどに含まれる「リナロール」、バラなどに含まれる「ゲラ二オール」が増えることがわかりました。そして、この傾向が、茎の焙じ茶のほうが大きいことがわかっています。
今回は、葉の焙じ茶と、茎の焙じ茶についてお話しました。日本茶を楽しまれる時には、飲んでいるお茶がチャのどの部分をつかったお茶なのか考えてみるのも、楽しいかもしれません。