大福茶と南部鉄器で迎える、新しい年。

2024年11月1日公開

関西を中心とした地域でお正月に飲む「大福茶(おおふくちゃ)」は、
新年を迎えてはじめて沸かしたお湯でいただきます。
その湯沸かしや急須に、南部鉄器を使ってみてはいかがでしょう。
約350年の歴史をもつ南部鉄器は、
お茶を飲むという何気ない行為を通じて、くらしの背筋をぴんと伸ばしてくれます。

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お正月。1年の息災を祈念して
いただく、大福茶。

1000年以上前、当時流行していた疫病を治めたとされる空也上人のお茶振る舞いに発祥する「大福茶」。その後、村上天皇が民衆の健康を願い新年にお茶を飲まれるようになり、1年の健康を願うものとして一般に広まりました。

地域によってさまざまなかたちがある「大福茶」。「大服茶」や「皇服茶」と書かれることや、「おおぶくちゃ」と読まれることもあります。大福茶のベースとなるお茶の種類は煎茶や玄米茶、抹茶をブレンドしたものなど幅広くありますが、共通しているのは梅と昆布が入っていること。空也上人が創建した六波羅蜜寺でお正月に行われる「皇服茶の授与」で小梅と昆布を入れたお茶を味わうことに由来したものでしょう。

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丸八製茶場の「大福茶」は、その年の干支がイラストになったパッケージに「献上加賀棒茶」のティーバッグ、昆布、梅がセットされています。ティーバッグのタグには、その年を占う「辻占」と呼ばれる伝統的な占いをイメージした言葉も添えられています。

献上加賀棒茶をベースにした丸八製茶場の「大福茶」は、茎の焙じ茶ならではの、すっきりと芳ばしい味わい。100年以上の歴史を持つ大阪の昆布専門店 こんぶ土居の北海道産真昆布を使用。箱に入って届く大きな昆布を手作業で細長く切り分け、美しく結び上げます。梅は和歌山県の三幸農園のもの。「大福茶」に合わせてしっとりと柔らかさを保った状態になるまで乾燥させ、1つ1つ丁寧に袋に入れていきます。晩秋から、社屋の一角を使い行われる作業は、年末の風物詩です。

鉄瓶で沸かした熱々のお湯で
大福茶をいれる。

六波羅蜜寺で行われる「皇服茶の授与」では、「若水(わかみず)」と呼ばれる元旦にくんだ水が使われるそうです。「大福茶」も、その年の一番はじめに沸かしたお湯を使っていただきます。
そのときにおすすめしたいのが、丸八製茶場の直営店でも使われていた南部鉄器の「鉄瓶」です。

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鉄の鋳肌(いはだ)の質感が感じられるからでしょうか。鉄瓶でお湯を沸かす風景には、どこか温かさが感じられます。

鉄器というとまず思い浮かぶのが、南部鉄器ではないでしょうか。現在の岩手県にあった南部藩は、古くから鉄資源に恵まれた地域でした。17世紀半ば、茶の湯を推奨した藩主が鉄で茶の湯釜をつくらせたことにより、これが献上品となります。そして茶の湯釜を一回り小さくした「南部鉄瓶」が生まれ、湯沸かしの道具として広く親しまれるようになったのです。

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丸八製茶場の「大福茶」は、急須や耐熱ピッチャーを使って家族の分をまとめていれることも、それぞれの湯のみに直接ティーバッグを入れて別々にいれることもできます。

このように、茶の湯から生まれた歴史をもつ「鉄瓶」は、日本茶との相性が抜群です。丸八製茶場では、お茶をいれるための水に軟水を推奨しています。鉄瓶でお湯を沸かすと、水分中のミネラルが鉄瓶の内部に付着して取り除かれて軟水化し、お茶をいれるのにぴったりの軟水になります。さらに、「大福茶」に入っている梅干しに含まれるクエン酸は、鉄瓶から出る鉄分の吸収を高めるといわれています。

くらしとからだを整える、
ことはじめ。

鉄瓶のうれしいところは、お茶をおいしくしてくれるだけでなく、お水そのものも飲みやすくしてくれること。地域的に硬水が多いヨーロッパでは、水を軟水化できる鉄瓶が人気なのだそうです。日本でも、軟水の水を買い求める人が増えています。ペットボトルなどのゴミを出すことなく軟水を楽しめる鉄瓶は、サステナブルな選択といえるかもしれません。

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扱いが大変そうに感じる鉄瓶ですが、お湯を入れたままにしないという点に気をつければ、難しいお手入れはいりません。もしサビがついてしまっても、自宅で取ることができます。鉄瓶より小ぶりの鉄急須は、その名の通り急須として使う鉄器です。直火やIHにかけることはできず、内側にほうろう加工が施されているため、鉄分の溶出もありませんが、鉄瓶よりも扱いやすく、保温性に優れているのが魅力です。

また、日本人に不足しやすい鉄分が手軽に取り入れられるのも、鉄瓶のうれしいところ。美容や健康に推奨されることの多い白湯を飲む習慣も、鉄瓶で沸かした、まろやかで体に優しく染み込んでいくようなお湯なら、続けやすいのではないでしょうか。

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寒い季節、朝一番にいれたお湯がすぐに冷めてしまった経験をお持ちの方も多いでしょう。鉄瓶は保温性が高いため、少しずつ飲みたい白湯の温度もしっかりと守ってくれます。

伝統工芸品である鉄瓶は、ものとしての存在感やデザインも魅力です。伝統的なイメージが強い鉄瓶ですが、最近はモダンでシンプルなものも見かけるようになっています。ぜひ、お気に入りの一品を見つけてください。

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新しい年を迎える準備には、心忙しい中にどこかわくわくとした高揚感が漂います。そんな風景の中に、「大福茶」と南部鉄器を、新しい伝統として加えてみるのも素敵です。

少し早めに準備をはじめると、師走と呼ばれる季節も、少しだけ余裕を持って過ごすことができます。丸八製茶場の「大福茶」は、10月下旬から予約を受け付け、12月にお届けします。里帰りの予定を立てはじめるこの時季に、新年を迎える準備や、過ごし方について考えるのも、心楽しいひとときです。

元日の早朝にくんだ水を「若水」として尊ぶように、日本では昔から新しいものに宿る瑞々しい生命力を大切にしてきました。新しい年は、健康を意識した習慣をはじめるのにもぴったりです。まだ見ぬ年への願いを込めて、来年を「大福茶」と南部鉄器ではじめてみてはいかがでしょうか。

大福茶

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