煎茶 内匠のこと。
2022年6月1日公開
丸八製茶場の「一番摘み煎茶 駿河 内匠(するが たくみ)」は、
静岡県の険しい山中でつくられたお茶です。
産地の名前を背負ってつくりあげる
力強く、素直なおいしさ。
丸八製茶場の煎茶は、生産者とお茶に対するビジョンを交わしながらつくられています。今回は「一番摘み煎茶 駿河 内匠」について、生産者の小杉佳輝(こすぎよしき)さんにお話をうかがいました。
静岡県のお茶の歴史は、中国で修行を積んだ鎌倉時代の高僧 聖一国師(しょういちこくし)が、チャの樹の種子を日本に持ち帰り、郷里に植えたことにはじまります。偶然にもチャの樹の生育にぴったりの条件が揃っていたその場所が、「駿河 内匠」がつくられている静岡県静岡市の葵区です。以来、この地区でつくられたお茶は「本山茶(ほんやまちゃ)」といわれ、静岡の代表的なお茶の一つとなりました。
そんな静岡県葵区の山中にある小杉さんの茶畑は、叔父である築地勝美さんから受け継いだものです。「『駿河 内匠』というこの地域の名前を商品名にしたのは、この地域を代表するお茶にしたい、という思いからです。本山茶の産地であるこの場所でのその覚悟と矜持は、相当なもの。叔父の強い思いを感じます」。
地域の名前を冠したお茶にふさわしく、「駿河 内匠」は、旨味・甘味・苦味・渋味といった煎茶の味のすべてを存分に味わうことができるお茶です。「一煎目は低温でいれて甘味を味わい、二煎目は苦味・渋味を、例えば甘いお菓子と味わう。三煎目はお茶本来のカテキンの味で口直しをして、その後、四煎目までも楽しめるようなお茶。茶葉に含まれている成分が濃いんです。お茶を出した後の茶殻さえも食べる玉露のように、最後まで味わっていただきたいと思ってつくっています」。
茶葉は100点満点。
だから、そこから引き算はしない。
小杉さんの叔父、築地さんは、「天才茶師」といわれた人物でした。そして小杉さんのお茶づくりも、築地さんの理論を受け継いだものとなっています。
「まずはいい茶葉をつくること。そのための第一条件は、やはり土壌です。茶畑はとても辺鄙な場所にあるのですが、日当たり、土の成分、寒暖差などさまざまな条件を見極めて叔父がこの場所を選んだのだと、今さらながら感じることがあります」と語る小杉さん。
「駿河 内匠」の茶畑は、山の頂上の急斜面にあります。ただ登るだけでも息が切れるほどの場所に、小杉さんは足繁く訪れ、管理を行います。「茶葉の状態を確認し、何かあればその都度対策を行います。肥料をまく作業は大変ですよ。使用する肥料はトン単位ですし。ドローンの使用を勧められたこともありますが、今のところは手作業です」。
小杉さんは大学でバイオテクノロジーを学んだ後、地元の農協共同組合(JA)に勤めたのちに、叔父のお茶づくりを継ぎました。「JA時代から、お茶の生産については一通りの知識はありました。ただ、理論と実際の作業とは、違いがありましたね」という小杉さんですが、これまでの経験は、土壌づくりにつながる肥料の開発になどにいきています。茶畑の土壌に合わせオリジナルで発注した肥料には、他の茶農家からの引き合いもあるそうです。
考えられるすべての方法を使って「まず100点の茶葉を育てる」ことは、小杉さんに引き継がれた、築地さんのお茶づくりのこだわりです。そして、100点の茶葉だからこそ、仕上げにも、独自の方法があります。「100点の茶葉の成分が失われることがないよう、加工はごく最低限。荒茶に仕上げる際の蒸しは、浅蒸しです。通常は20~30秒でも浅蒸しといわれる範囲ですが、『駿河 内匠』は、さらに短く、時間も1秒単位で加減します」。
秒単位の作業でお茶本来のおいしさを守り抜くことで、おいしさとなる成分をとことん味わうことができるお茶が生まれるのです。
本格的な煎茶の味わいを、一杯から。
水出しにも便利なティーバッグ。
本格的な煎茶を、もっと気軽に味わっていただきたい。そんな思いから、丸八製茶場では「駿河 内匠」のティーバッグを開発しました。2gの茶葉が入ったティーバッグは、一人で手軽に煎茶を楽しみたいときに便利なだけでなく、おもてなしの際に、きちんと茶葉と水の量を加減していれたい時にも便利です。
水出しでいれた煎茶も、これからの季節の贅沢。低温で浸出することで、旨味・甘味がすっきりと引き立ち、温かくいれた時とは別の味わいになります。特に、いれる温度によってさまざまな味わいになる「駿河 内匠」は、その違いを楽しんでいただきたいお茶です。
煎茶に注目が集まり、「やぶきた」ではない品種や、さまざまな加工を行ったものなど、煎茶のバリエーションが増えています。そんな中でこそぜひ本来の煎茶のおいしさを追求した、まっすぐな「駿河 内匠」を、じっくりと味わってみてください。