焙茶nomaが、生まれる場所へ。

2022年9月16日公開

くらしを楽しむことは、旬を楽しむこと。
焙じ茶のさまざまな旬を、丸八製茶場からご紹介します。
今回は、2022年9月17日発売の「焙茶noma(ノマ)」についてです。

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富士山を望む山の上で
風を味方に育てる茶葉。

今季の「焙茶noma(ノマ)」に使われている茶葉「藤かおり(藤枝かおり)」は、静岡県藤枝市の、とある山の上でつくられています。徒歩ではもちろん、一般的な車種の車でも登ることが難しい山道をすいすい進んでいく生産者の中山さんの車の後をついて20分。視界が開けると、そこには茶畑が広がっていました。

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花のような甘く濃厚な香りを持つ今季の「焙茶noma」。原料である「藤かおり(藤枝かおり)」は、インドからもたらされた紅茶向けの種子を改良し、つくられた品種です。

標高350mのその場所は、中山さんが持っている茶畑の一つ。「向こうに見えているあの山でも、『藤かおり(藤枝かおり)』をつくっています」と、指さしたその先にも、緑色をしたチャの樹の畝が山の斜面に並んでいました。

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周辺の山に点在する中山さんの茶畑。場所によって日当たりが異なるため、茶葉の成長の仕方も違ってくるのだとか。

「山の風が、霜を払ってくれる。だから、茶葉を育てるには山の上がいいんです」と語るのは、中山製茶の中山隆(たかし)さん。天気のいい日には富士山も見えるという山でのお茶づくりは、チャの樹にとっては良好な環境ですが、それを育てる人にとっては手のかかることが多いようです。

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中山製茶の中山隆豪(りゅうごう)さん。今回は、中山製茶の中山隆さんとその息子さんである隆豪さん、隆さんの孫である村松良穂(よしほ)さんの3人にお話をうかがいました。

「まずあちこちにある茶畑に行くのに時間がかかる。都会なら、通勤に時間がかかる、というイメージでしょうか。畑が猪や鹿に荒らされることもありますね。電気柵で対策をしていますが、その設置をするのもまた大変」と、隆豪さんは、笑顔で苦労話をしてくれました。

茶どころ静岡で、希少品種を
つくるということ。

日本で生産されるお茶の約7割は「やぶきた」という品種です。特に茶どころである静岡の茶葉は評価が高く、「やぶきた」は生産者にとっても売り手が見える、安全な品種だといいます。「だから、『藤かおり(藤枝かおり)』をつくってみないか、と生産者に声がかかった時、手を挙げたのはうちくらいでした」と、隆さんは語ります。

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「藤かおり(藤枝かおり)」の幼木。「摘み取りができるようにまるまで、あと2~3年かな」という中山さん。チャの樹を植えてから摘み取りまで時間のかかるお茶づくりで、どの品種を植えるかは大きな決断です。

「使ってくれることが分かっていれば、つくることができるんでね」。その言葉からは、逆にまだ売り先が見えていない品種をつくるのは、とても勇気がいるということも、想像できます。

丸八製茶場の焙じ茶は、厳選した原料を使っているため、求める品質の原料の流通は多くありません。中でも「焙茶noma」の原料のように、希少な品種を生産してくださる生産者は貴重な存在です。「やぶきた」以外の品種をつくることが一般的ではなかった時代に、「藤かおり(藤枝かおり)」を植え、つくり続けてきた中山製茶のような生産者のおかげで、「焙茶 noma」が生まれているのです。

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右から、中山製茶の中山隆さん、中山隆豪さん、村松良穂さん。遠く後ろに見えているのは、中山さんのご先祖の山なのだそうです。

家族全員でつくり上げる
お茶の香り。

「萎凋(いちょう)」は、摘み取った茶葉を風通しの良い場所にしばらく置き、萎れさせることにより、茶葉の発酵を促し、香りを引き出す工程です。香りを重視する紅茶や烏龍茶では欠かせない作業ですが、煎茶の場合は、萎凋を葉の傷み・欠点とみなす傾向があり、日本ではあまり行われていません。

今季の「焙茶noma」の原料となる、香り高い「藤かおり(藤枝かおり)」をつくることの難しさの一つは、この萎凋にあります。煎茶づくりではあまり一般的ではないこの工程を静岡で行うことができるのは、中山製茶をはじめとする、ごくわずかな生産者だけなのです。

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山のふもとにある中山製茶の製茶工場兼直売所。中山さんの畑で摘まれた茶葉は、すべてここに集められます。

中山製茶では、この萎凋の工程を家族総出で行っています。摘み取った葉は、すぐに山のふもとにある製茶工場へ運び、日光にさらします。できるだけ均一に、多くの葉の萎凋を行うため、庭先からコンテナの上まで、使える面をすべて使って萎凋を行います。

日光の力によって進む萎凋は、その日の気候で屋内に取り込むまでの時間が変わります。中山製茶でそのコントロールしているのは、中山隆さんの妻であるミツ代(みつよ)さんなのだそうです。「日に当てる時間だけでなく、屋内へ取り込む順序まで見極めて、指示をくれます。萎凋が進みすぎない絶妙なタイミングで製茶を行うために、この時期は親戚も集めて、朝から晩まで作業します」。

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茶葉を蒸す機械。萎凋後は発酵を止めるため、すぐに蒸す工程に入り、その後乾燥、揉捻が行われ、荒茶に仕上げられます。

萎凋を終えた茶葉を蒸し、形を整えて、「荒茶」と呼ばれる状態の茶葉に仕上げられるまで、およそ3時間半。作業自体は機械によって行われるものの、細かな調整を行うため、常に人が傍にいて確認する必要があります。

早朝の摘み取りからはじまり、荒茶に仕上げるまでは一日仕事です。その時期の仕事について教えてくれた中山隆豪さんは、その香りを思い出すかのように「萎凋をしている時期は、工場の周辺が花のようないい香りでいっぱいになるんです。ぜひ、その期間に訪れてあの香りを体験していただきたいですね」と語ってくれました。

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中山製茶でつくられた荒茶は、石川県に運ばれ、丸八製茶場の工場で焙煎を行い、「焙茶noma」となります。

甘く豊かな芳香を持つ「藤かおり(藤枝かおり)」は、近年注目を集め、煎茶としても和紅茶としても評価が高まってきました。丸八製茶場では、「焙茶noma」をはじめとする商品で、個性豊かな品種に注目し、新しい焙じ茶の世界を広げていこうとしています。そうした試みは、中山製茶のような、従来の常識に捉われないチャレンジをし続けてきた生産者の方の努力の上に成り立っているのです。

インドからもたらされた種子と日本の品種とのかけあわせで生まれ、その甘く豊かな芳香ゆえに希少品種となった「藤かおり(藤枝かおり)」と、そこから生まれた「焙茶noma」。楽しむ時には、「藤かおり(藤枝かおり)」を巡るさまざまなドラマについても、ぜひ思いを馳せてみてください。


*「焙茶noma」は2022年9月17日発売です
*季節・数量限定商品です。
 限定数に達した場合は販売終了とさせていただきます