スタッフコラム
お気に入りの道具
2023年2月22日公開
毎日のようにお茶に親しんでいる丸八製茶場の社員。
お茶をいれる道具にも、それぞれこだわりがあります。
思い入れのある茶道具について、聞きました。
「考え方」への共感で選ぶ
上野さんの、お茶と趣味の道具。
「コーヒーはあまり飲まないんです。それもあって、焙じ茶、中でも丸八製茶場のお茶が好きだったんですよね」と語る上野優介さんは、現在、丸八製茶場の中で少し変わった役割で働いています。「はじめは工場で製造をしていました。その後、配属が変わり、今は製造から販売までの幅広い業務を横断的に改善する仕事をしています」。
丸八製茶場に入社する前、上野さんは2つの企業でそれぞれ違う経験を積みました。「1社目は地元の銀行。金融商品を販売する仕事でした。2社目は地元の温泉旅館です」。一見あまりつながりのない仕事のようにも感じますが、よくよくお話を聞くと、学生時代から一本筋の通った上野さんのキャリアが見えてきました。
学生時代、上野さんは経営を学んでいました。1つ目の上野さんの茶道具は、その時代に購入したスノーピークのマグカップです。
「僕の学生時代、アウトドアという分野に『ライフスタイル』という考え方を取り入れた経営で注目されていたのがスノーピークでした。そんなブランドに憧れて、当時としてはふんぱつして買ったものです」。アウトドア用の製品ですが、アウトドアにこだわらずずっと使い続け、今でも現役です。
その後に購入したお揃いのケトルも、お茶をいれる時に使います。「でも、実は自宅で飲むお茶は、水出しが多いんです。冷蔵庫に入れておけば、いつでも飲みたい時に飲めるのがよくて。茶葉は、いろいろと試したのですが、結局丸八製茶場の『ほうじたて』に落ち着きましたね」。ゆっくりと過ごしたい時には、水出しした『ほうじたて』をわざわざ別の容器に移し、レンジで温めて飲むこともあるのだとか。
「ものをたくさん持ちたいほうではなく、持つならシンプルなものがいいと思っています」という上野さんにとって、シンプルなデザインで耐久性に優れたスノーピークの製品は、十年以上の付き合いの愛用品です。
競技用の自転車は、
学生時代の同級生の影響で。
大学を卒業して、上野さんは銀行で仕事をスタートします。その頃、満を持してはじめたのが、学生時代から気になっていた競技、トライアスロンでした。
「学生時代の友人がやっていて。その友人はトライアスロンをやりながら、朝夕新聞配達のアルバイトで貯めたお金で留学して、さらに学生生活も満喫していた、すごい奴だったんです」。でも、当時は上野さんも仕送りなしで学生生活を送っており、アルバイトと学業でハードスケジュール。「なので、就職してからの挑戦になりました」。
上野さんの2つ目の道具は、お茶からは少し離れるのですが、「トライアスロンの自転車」でした。
「シンプルなデザインが好きなので、モノクロにポイントで赤を入れています」。石川県で行われた大会にも出場したことがあるという上野さん。「体が鍛えられる、という部分はもちろんあるのですが、やはりそれと一緒に精神が鍛えられるのがいいですね」。尊敬していた同級生との学生時代の思い出を、現在の努力に結び付けることのできる、上野さんの向上心の高さがうかがえるエピソードでした。
温泉とコースター。
「地方再生」でつながる道具たち。
銀行を退職後、上野さんが地元の温泉旅館に就職したのは、純粋に「地元が好き」という気持ちからでした。「温泉街は寂れてしまっているところが多いんですよね。それもあって、大学時代に学んでいた経営の分野は、地域のブランディングや地方再生でした」。その学びは、社会人になってからも続いていました。
3つ目の道具は、コースターとして使っている「黒川温泉入湯手形」です。「熊本県の黒川温泉は、人気の観光地として有名なのですが、実はその人気をつくり上げたのは後藤哲也さんという方なんです。この手形は、その方にお会いするために黒川温泉へ行った時の記念品なんです」。
後藤さんにお会いする、と言っても「実は約束も何もしていなくて。突撃インタビュー、でした」という上野さん。幸運にも後藤さんとお会いすることができたその旅は、上野さんにとって忘れられないものになりました。
そういった経緯もあり、温泉旅館へ転職した上野さんですが、そこでの体験から新たな学びを得ます。「いらっしゃるお客様を見ているうちに、景気を先行しているのはものづくりをしている企業だと気づいたんです」。そしてものづくりの企業の中でも、製造から販売までを一貫して行なっている会社へ行きたい、という気持ちが芽生えてきます。「『垂直統合』というビジネスモデルですね。石川県では、お酒やお菓子、お茶を扱っている会社に多いビジネスモデルで。そこで、丸八製茶場に縁がありました」。
入社後にまず購入したのが、4つ目の道具であるMOHEIMのマグカップでした。「それまでの職場では、オフィスで自分のカップでお茶を飲む、という習慣がなかったんです」。丸八製茶場では、毎朝の試飲にはじまり、商品であるさまざまなお茶をオフィスで飲むことができます。「マグは一番大きなサイズにしました。できるだけたくさん飲みたいですからね」と、上野さんは笑顔で語ります。
上野さんがオフィスで特に好んで飲むのは、「加賀ほうじ茶」です。「『加賀ほうじ茶』は、華やかな印象なんです。個人的なイメージですが、『献上加賀棒茶』は男性的、『加賀ほうじ茶』は女性的で、花のように柔らかい」。
上野さんのビジョンは、丸八製茶場に入社してからも広がり続けています。「副業として、民泊をはじめたんです。民泊は昔の日本の湯治場にあった、炊事場がついた、長期滞在ができる宿泊所に近い。そういう場所を復活させたくて」。
「企業と経営者が好き」という上野さん。いろいろな仕事に就きながらも一貫してその心にあった地方再生というテーマは、上野さんのライフワークなのかもしれません。「黒川温泉入湯手形」のコースターの上に、スノーピークのマグカップ、丸八製茶場の焙じ茶。上野さんのいつものお茶の風景には、過去と未来をつなぐ道が見えるようでした。